園長のことば (令和6年(2024).11月)

 

 10月後半から急激に朝夕の気温がさがり、夜中は、布団がなければ寒くて目が覚めます。日中は、過ごしやすくなり、園児も園庭で過ごす時間が増えています。楽しそうな声が聞こえてくると、こちらまでしあわせな気持ちになります。

 さて、おそくなりましたが、本園においても11月中にICT(Information and Communication Technology)システムを導入し、12月末まで試験運用し、問題が無いようでしたら、来年1月から本格運用の予定です。実は、7年前にも「保育教育課程」「保育計画」や「指導案」等をICT化するシステムを導入したのですが、マニュアルが分厚い辞書くらいある上、あまりにも使い勝手が悪かったので、ICT化システムを新たに導入することに及び腰になっておりました。今回、導入するのは、前回ICT化しなかった部分です。

 これまで保護者のみなさまには、登園・降園時刻を手書きで記入していただいておりました。欠席の連絡は、電話もしくはメールでお願いをしておりました。緊急の一斉連絡にはLINEを使っておりました。保護者のみなさまと園との相互連絡には、おたより帳を使っておりました。そういったことを、スマートフォンもしくはタブレットのアプリでおこなうことになります。私などは、スマホで文章を入力するには、時間がかかりすぎて、あっという間に文章を入力する若い人を見ると、感心してしまうのですが、この機会に音声入力のやり方を覚えないといけないかと思っております。

 これまでは、日々の保育の様子をお伝えするのは、おもに文章でしたが、写真も使えますから、より日々の園での様子を理解していただきやすくなるかなと思っています。

 前回の失敗を繰り返してはいけませんから、ICT化ソフトの選定にあたって、使い勝手を知るために、試験的に使わせてもらえないかと何社かにお願いしたのですが、デモ版もなく、どこの会社もそれはできないと断られました。福山市内で御社のICT化ソフトを導入されているところがあれば、使い勝手を聞きたいから教えて欲しいとおねがいすると、福山市内でも複数の園に採用していただいておりますが、採用先との間に守秘事項の契約がありますから、お教えすることはできませんということでした。ただ、そこのソフト会社の代理店をつとめている保育業者さんは、市内で初めての採用だとぽろりと言われたので、頭の中に???が浮かびました。

 福山市公立で採用されているものも気になりましたので、なぜそのICT化ソフトを採用したのか、選定理由を教えて欲しいと尋ねると、総合的に判断しましたということでした。総合的ってどういうことなのでしょうか?? どこの会社のものも似たり寄ったりということなのでしょうね。

 

 

 

園長のことば (令和6年(2024).10月)

 

 数日前より、早朝の気温が少し下がり過ごしやすく感じられるようになりました。鳴り通しだった熱中症警報アラームもあまり鳴らなくなり、ようやく園庭で遊べるようになりました。園庭から園児の楽しそうな声が聞こえてくるのはとてもよいものです。それにしても今夏の暑さは、尋常ではなかったように思います。暑さが今年だけの事であればよいのですが、そうではないでしょう。福山市が緊急避難場所に指定している小中学校の体育館へエアコン整備を計画という記事がでていましたが、将来的には、全小中学校体育館へ設置が望まれます。

 話題を変えます。今年7月に出版された「アフリカ哲学全史」(筑摩書房)に目を通したのですが、まえがきの内容から、これからの保育・教育のあり方への大切なヒントをもらいました。

 人間と動物を分けるものは何か?人間には「理性」があると考えられています。「理性的」な人というのは、悪い意味で使われることはありません。「理性」こそが科学的思考を生み出し、科学技術を進歩させたのですから。ですが歴史を振り返ってみれば、その「理性」こそが、黒人を奴隷にし、アフリカを植民地にしてきたではないかということでした。衝撃でした。ではアフリカでは人間と動物を分けるものをどのように考えるのか、それは人間だけが「分かち合う」・「分け合う」ことを知っているということでした。

 保育・教育は「理性(人間)は間違いを犯してきた」これからも「間違いを犯す可能性がある。」からスタートしなければならないし、保育・教育は「分かち合う」・「分け合う」ことを知ることからはじまらなければならないということです。これは大乗仏教の考え方でもあるのですが。 

 

 

 

園長のことば (令和6年(2024).9月)

 

 中国新聞に、「福山駅周辺でネウボラセンターの設置を検討」という記事がでていました。

ネウボラというのは、フィンランド語で、neuvo「 助言、アドバイス、忠告」とla「場所」という2つの言葉から作られた造語で、妊娠・出産・子育てまでをひと続きに支援する仕組みです。なぜフィンランド語なのかわかりませんが、

⓵2000年の学力調査でフィンランドが世界1位

②女性の社会進出も世界1位

③出生率も上がっている

以上3点から、見習うべき点が多いと考えられた為なのでしょう。

 2000年OECD学力調査が公表されると、授業時間も宿題も少なく、教師主導型でなく

子ども主体型で、なぜ学力世界1位なのかということで驚きをもって受け止められました。

それが2022年OECD学力調査で、フィンランドは学力がずいぶん低下していることが判明しました。教育関係者にとってはショックだったでしょう。フィンランドのような少人数教育であっても、「子ども主体型」で学力上位を維持し続けるのは難しいのだということがわかります。

 ではなぜ2000年の学力調査では世界1位だったのかというのが、疑問として残ります。OECD調査報告について、これから読んでみたいと思います。

 フィンランドは、ネウボラで出生率が上がったと言われていましたが、現在出生率も1.3

まで下がっていますから、どうやらネウボラも少子化に有効とは言えないようです。

先進国はどこも出生率低下という課題を抱えています。先進国に共通するのは、

    ①競争社会    ②個人主義      です。

「仕事と育児の両立」とか、「家庭と仕事の両立」いうことが言われますが、競争社会である

というところは変わりません。子どもを抱えて走るのと、自分ひとりで走るのではどちらが有利

かと問われると、自分一人で走る方が有利にきまっています。先進国で少子化が止まらないのも

当然です。

 私は、外国にお手本となる少子化対策を求めるよりも、江戸300年の間、人口が減少した

藩と、人口が増えた藩の違いを調べた方がよいのではないかと思ったりします。

 

 

 

 

園長のことば (令和6年(2024).8月)

 

 暑い日が続いています。天気予報を見ると、最高気温35度前後の日が続くようです。暑すぎるためなのか、セミの声が以前ほど聞こえてきません。蚊もでてきません。釣りをされる方に聞くと、釣れる魚も変わってきているそうです。海の生態系にも影響を与えているのでしょう。スマートフォンには、毎日、熱中症警報アラートが出てきます。熱中症警戒アラートがでているなかで試合をしている高校球児はたいへんだなあと思います。夏の甲子園は、朝日新聞がスポンサーですが、「熱闘、夏の甲子園」などと書いていていいのかなと少々疑問を感じます。高野連も大会の在り方について見直しをすべきではないかと思います。

 野球に限らず中学校・高等学校の運動部の部活動も暑さ対策が十分なのか気になります。

 職場環境にしても、労働時間については、例えば超過勤務手当は25%増しとか、休日出勤手当は35%増しとか労働者を守るための規則がありますが、職場の気温・温度については労基法に定めがあるとは思えませんので、職場によって夏場はほんとうにたいへんだろうと思います。

 法律や規則を作る人たちは、エアコンの効いた室内で仕事をされますから、この異常気象のなかで、夏場空調設備のない職場で働いている人が置かれている状況には鈍感なのだろうなあと思ってしまいます。それぞれの職場で暑さ対策は考えられているとは思いますが、根性で夏場を切り抜けるといった職場もあるのではないかと想像します。

 さて、熱中症だけでなく、またもやコロナ感染症の第11波がきています。それ以外にも劇症型溶連菌にも気を付けなければいけません。熱中症対策としてこまめな水分補給と、感染症対策として、手洗いとうがいの大切さを繰り返し伝えることが大切だと思っています。

 

 

 

 

園長のことば (令和6年(2024).6月)

 

 「花まつり」とはお釈迦様のお誕生をお祝いする行事です。4月8日が「花まつり」の日なのですが、4月は年度当初ということもあり、毎年一か月遅らせて5月にお寺の本堂で行います。そのときのことです。「今日は、花まつりのお祝いをするけど、花まつりってだれの誕生日か知っているかな?」と尋ねたところ、ある子が少し得意そうに「知ってるよ、○○先生の誕生日」と答えてくれました。予想外の答えに一瞬戸惑いましたが、あとで確認してみたところ○○先生は5月生まれでした。先生の誕生月まで覚えているのかと感心してしまいました。

 次に、「お釈迦様って、生まれ方がちょっとみんなと違ってたんだよ」と話すと、別の子が、すこし考える風で「たまごから生まれた?」と答えてくれました。おもわず吹き出しそうになりましたが、たしかに、あかちゃんで生まれてこないなら、たまごから生まれてきたと推測するのは間違っていません。

 次に「お釈迦様のお誕生をお祝いして、いろいろな生き物たち、ぞうさんとか、おさるさんとかがやってきたんだよ」と話すと、また別の子が「虫も?ハチも?」と聞いてきました。

 それぞれが自分の持っている知識のなかで考え、疑問をもち、想像力を働かせていることがよくわかるだけでなく、とても安心して過ごしているように感じられました。

 もう10年以上前になりますが、「先生に叱られる」とか「先生に怒られるよ」という子どもたちの声がよく聞こえてくることがありました。そういうなかでは、自ら考え、判断するよりも、叱られるか叱られないかが行動の基準になってしまいます。大けがをしてはいけませんから、安全面については、危険について丁寧に説明することが必要ですが、それ以外については、子ども自身の興味や関心を尊重し、興味や関心が広がるように保育環境の準備をすることが大切になります。

 自画自賛するわけではないですが、安心できる環境のなかで、幸せに過ごせているのではないかと感じています。

 

 

 

 

 

 

園長のことば (令和6年(2024).5月)

 

 温暖化の影響なのか、日中、汗ばむ日が続いています。昔は夏服への衣替えは6月1日でしたが、この何年かは、暦と実際の気候がかなり乖離してきているように感じられます。熱中症の心配を4月からしなければならないとは思いませんでした。園でも水分補給には気を付けております。ご家庭での水分補給もこまめにお願いいたします。

 豪雨、地震、台風、津波といった自然災害も経験からの判断が通用しない想定外のことが起きることが増えてきたように思います。

 もう二十年?近く前になりますが、危機管理対策マニュアルをそれぞれの施設で策定しなければならなくなり、参考書を見ながら、マニュアルを作成しておりました。そのなかに、火山の噴火や大津波、大火事、原子力発電所の爆発や飛行機の墜落??などいろいろな災害が記載されており、そんなこと起きるはずがないじゃないか、ずいぶんと大げさだと思っておりましたが、その後、けっして大げさではなかったのだということがわかることになりました。

 感染症対策にしても、新型コロナ感染症が流行し始めた当初は、数か月で収まるだろうと思っていましたが、結局3年間以上にわたり、いろいろな面へ影響がありました。今では笑い話ですが、福山市で最初の感染者が出た時は、震え上がりました。一度あることは二度あるといいますから、新たな感染症が現れることを想定しておかなくてはならないのでしょう。コロナ感染症に関しては、終息したものと受け止めていますが、今度は、コロナワクチンの後遺症について、このところよく見聞きすることになりました。

 ウクライナとロシア、ハマスとイスラエルの戦争やミャンマー、スーダンの内戦などを見ていますと、日本は戦後79年間、戦争に巻き込まれることなく平和でしたが、これからも、戦争に巻き込まれることなく平和であり続けることができるのかわかりません。園の危機管理マニュアルへ、ミサイル対策であるとか、爆撃対策とか、防空壕の設置を入れなければならない時代が来ないでほしいと願わずにはいられません。

 

 

 

 

 

園長のことば (令和6年(2024).4月)

 

 令和6年度の入園・進級式を迎えることができました。桜の開花が例年よりも遅れていますが、もうしばらくするときれいな花を咲かせてくれるのでしょうが、開花が待ち遠しく思われます。

 この数年、園内事故のニュースを目にすることが増えたように思います。子どもが安心して安全に過ごせる環境であることがもっとも大切です。安心して安全に過ごせる環境のなかで、子どもは、自ら夢中になって遊ぶ多様な体験・経験を繰り返すことを通して多くのことを身に着けます。体の使い方を学び、いろいろな物事への興味や関心を広げ、疑問をもち、自ら考え、協力し、試行錯誤しながら解決することの喜びを学びます。

 これが「自ら学ぶ力」とか「生きる力の礎」といわれるものです。小学校教育を先取りし、数を早くから数えられるようになることや、文字を早くから読み書きできることになることを喜ばれる傾向があるのですが、幼児期には数や読み書きよりも大切にされなければならないことがあります。木々も根がしっかりしていなければ、成長できません。それと同じく幼児期は、しっかり根を張る時期です。そのためには夢中になって遊ぶことのできる体験・経験を重ねることこそが大切です。

 さて、保育をご指導いただきますのは、引き続いて林よし恵先生です。広島大学付属東広島幼稚園で、幼稚園教諭として勤務され、その後広島大学、広島女学院、広島文化学園大学で、幼児教育を教えてこられました。

 どうぞ、一年間よろしくお願い申し上げます。子どもと保育者と保護者の笑顔と笑い声に満ちた園でありたいと思っています。