園長のことば (令和2年(2020).4月) 

「歩くのがゆっくりな人と歩くとき、自分もゆっくりと歩く そんな世の中に」

-みんなちがってみんないい-

 

 新年度を無事に迎えることができましたと申し上げたいところですが、今年に入り、新型コロナウィルスによる感染症が発生し、終息の気配は一向にありません。いつ福山市で感染者がでるのか、感染爆発が起こるのではないかと、神経を尖らせながらの日々を送っているところです。当初は、重症化するのは高齢者もしくは持病のある者だけだということでしたが、数日前よりヨーロッパでは持病のない10代の若者の死亡が伝えられています。

中国の研究グループの発表では、1歳未満の重症化率10.6%。6歳未満で7.3%ということですから、園としては極めて深刻に受け止めなければならない数字です。

 危惧しておりますのが、感染していても無症状の人が一定数存在するということです。無症状の職員・園児がひとりでも登園すれば、園内での感染拡大は防げません。その対策をいかにするか苦慮しております。 こまめな換気と手洗い、園内の消毒を徹底する以外ないと思っておりますが、子どもはくっついて遊びますから、それで園内での感染を防ぐことができるとは思えません。福山旧市内の保育所・幼稚園・小中高等学校は、5月から光化学スモッグ注意報で、日中、窓を開けての換気もできないでしょうから、はたして対処できるのだろうかと心配しております。

 園の行事についても、感染防止のため見直しが必要になってくることと思います。ご了承ください。

 保護者の皆さまにお願いしたいのは、お子様の検温、咳症状と嗅覚味覚について毎朝かならず確認をしていただきたいということです。そして体調がいつもとは違うようであれば、お休みくださいますようお願い申し上げます。また、保護者の方の体調がよくない時も、園へお知らせください。

 

 最初のみだしの「歩くのがゆっくりな人と歩くとき・・・」は、エデュカーレという保育教諭向けの雑誌のなかの言葉です。いまの世の中を見ておりますと、「自己責任の社会」という言葉に、だれもが追い立てられ不安と息苦しさを感じているように思われてなりません。「頑張れば夢はかなう」とか「夢は持ち続ければ実現する」というのは、夢がかなわないのはあなたの努力不足という事になります。「頑張れば夢はかなう」という言葉は、持って生まれた能力・才能の有無の差をすべて努力の問題に置き換えてしまうように感じられて、そのような考え方の先に、社会全体の幸せがあるとは思えません。ひとりひとりの園児だけでなく、職員も、園に関係する業者さんも含めて、みんなが幸せに過ごせるような社会であることを願って、そして本園で過ごす子どもがそういう世の中の実現に向かって人生を歩んでくれることを願って日々の保育をていねいに行いたいと思っています。どうぞ一年間よろしくお願いいたします。

 

 さて、年6回行う園内研修会ですが、今年度も引き続き広島大学大学院教育研究科客員教授の望月悦子先生にご指導いただきます。もう何年目になるでしょうか。広島県の幼児教育の第一人者の先生にご指導いただけるのは、たいへん幸運なことだと感謝しています。指導いただく内容は、教材研究と環境構成、子ども理解についてです。

 

 

園長のことば (令和2年(2020).5月) 

 保護者のみなさまには、登園を控えて下さいのお願いばかりで、たいへん心苦しく思っております。ご協力に深く感謝いたします。一刻も早く終息してくれることを願っておりますが、ニュース等では連休後、再び感染者数の増加が起こる恐れがあると言われています。福山市は現時点では東京や大阪ほど深刻ではないと思いますが、それでも、「あそこに白色の防護服の人がいた」とか、「○○で感染者がでた」という噂に慌てふためき、事実確認してみると違っていて一安心ということを繰り返しています。

 連休期間中、沖縄への飛行機の予約が6万人分あるということをニュースで知り、園児と職員を感染から守るためには、どうしたらよいだろうと頭を悩ませている身からすると、世の中には、「新型コロナウイルス感染症なんてたいしたことない」と思っている人もずいぶんと多いのだなあと驚嘆しております。

 密閉を避けるため窓を全開したまま、それでは肌寒いので、同時にエアコンの暖房全開、薪ストーブを焚くというのは、初めての経験でした。園児が、「窓が開いていたら、ハチとか虫が入ってくるから、閉めないとだめだよ」とわざわざおしえに来てくれました。事務室へツバメが2羽、飛び込んできました。しばらく部屋のなかをくるくると飛んでいましたが、出ていきました。きっとつがいなんでしょう。安全に子育てできる場所を探しているのでしょうね。どこかよい場所が見つかればいいのですが。そういえば、鳥インフルエンザ騒動の時に、ツバメが玄関やテラスの下へ巣を作ろうとするので、可哀そうだなと思いながらも、箒で巣を作らさないようにしたことを思い出しました。

 5月の連休明けから通常通り小中高等学校が再開されるのかどうかわかりませんが、保護者の皆さまへお知らせしておかなくてはいけないことがあります。

公私立に関わらず、保育所・幼稚園・認定こども園・小中高等学校の園児・生徒は、スポーツ振興センター保険へ加入することが義務付けられているのですが、新型コロナウイルス感染症により健康被害・後遺障害等の事態が起こっても、一切保険から給付はないということです。本園の場合、東京海上日動火災保険株式会社の「ほいくのほけん」にも加入しているのですが、こちらも新型コロナウイルス感染症による健康被害・後遺障害等の事態が起こっても、現時点で補償対象とすることはないという回答がきました。市役所へ、「保険はすべて免責だということを承知しているか」と問い合わせたのですが、「園側に落ち度がなければ関係ない話だ」と軽くいなされショックを受けました。福山市全域で、新型コロナウイルス感染症で園児や生徒に健康被害・後遺症・死亡等が起きないことを心から願っています。

 5月の遠足や観劇もすべて中止にしなければなりません。遠足は屋外だから大丈夫かなと思ったのですが、バスが密室になりますし、コロナウイルスは人から人へではなくて、物から人へ感染するのではないかといわれはじめ、屋外でも手の触れる場所は、消毒しなければならないというのですから、中止せざるを得ません。

 園舎の灯りを消し、鍵を閉め、見上げる夜空の星はきれいなのですが・・・

 

 

園長のことば (令和2年(2020).6月) 

 6月1日以降について現時点(27日)で、保育施設課・保育指導課より何の連絡もないのですが、家庭保育要請も解かれるであろうと思っています。長期間に渡りご協力ありがとうございました。

第二波、第三波がくるといわれていますから、登園前の検温、マスク着用(3.4.5歳)、本人および家族の体調不良の場合のお休み、土曜日の家庭保育については、引き続きお願いすることになります。

 これから「新しい生活様式」に合わせて、①園児はどのような生活習慣を身につけるべきなのか、

②園の衛生管理のあり方、③幼児教育・保育の方法をどのようにしていくのか、④園利用のあり方について検討していくことになるのでしょう。

 

他自治体では、園職員が感染死亡、園児が感染といったニュースもありましたが、重症化した乳幼児については1例しか聞いておりません。さいわい福山市においては、園児や職員が感染したということはなかったようです。それにしても、諸外国と日本の感染者数の差は、何が原因だったのでしょうか。明確に分からないままなので、モヤモヤが残ったままです。

 

 3月下旬にオゾンによる新型コロナウイルスの不活化を確認したというニュースが流れておりましたので、すぐに低濃度オゾン機器(日本製)を購入いたしました。設置後、ニュース記事について調べてみると、オゾン濃度1ppmで60分暴露させるとコロナウイルスを10分の1から100分の1に不活化できるようです。ただし1ppmは、人体へ有害な作用を及ぼす濃度です。設置した低濃度オゾン機器は0.05ppmですから、新型コロナウイルスに、どの程度の効果があるのかよく分かりません。インフルエンザウイルス・ノロウイルスに対しては本器を作動させ24時間後に測定した結果、検出できなくなったと書いてありました。ですから、0.05ppmの低濃度オゾンでも24時間コロナウイルスに浴びせ続ければ不活化するのかもしれません。

ちなみにオゾン濃度は都市部で0.005ppm程度、晴天時の海岸や森林で0.02~0.05ppm程度だと言われているそうです。つまり、この辺りは自然豊かな環境ですから、わざわざ低濃度オゾン機器を設置しなくても日によっては0.05ppm程度のオゾンはあるということなのでしょう。

 マスクやアルコール消毒液は、一括購入していたので、我ながら先見の明があると思っていました。低濃度オゾン機器は慌てて飛びついて購入しましたが、もう少しよく検討すべきだったかもしれません。

 

 

園長のことば (令和2年(2020).7月) 

 5月末までの静かな園内とは打って変わり、6月に入り園舎内で園児の声が聞こえてくるようになりました。事務室へ毎日のように顔をのぞかせにくる子もいます。たのしそうな声が聞こえるのはいいものです。ああ、やっと日常が戻ってきたと思いたいところですが、新型コロナウイルス感染リスクはゼロになったわけではないですから、以前のようにというわけにはいきません。行事や保育のひとつひとつを感染リスクとの兼ね合いのなかで見直していかなくてはなりません。プール遊びと卒園児との交流会は、中止することにしました。年長組さんのテーブルマナーも実施は難しいでしょう。

 6月15日、市の保育指導課からのメールに、光化学オキシダント注意報が出た場合、窓を閉めましょうと書いてありました。沼隈は、光化学オキシダントの対象地域ではありませんが、旧市内は、新型コロナウイルス対策で、換気をしなくてはいけないし、光化学オキシダント対策では、窓を閉めなくてはいけないし、開けるべきか閉めるべきか苦慮されるだろうと思います。

 3歳児クラスは、午前中太陽光が入ってきますので、換気のために窓を開けているとエアコンを全開にしても、室温が上がってしまいます。それが原因で熱中症になるといけませんから、エアコンを増設いたしました。とてもパワフルなエアコンなので、これで安心と思っていたのですが、今度は、消防署の点検で、エアコン吹き出し口と火災報知器の距離が充分でないということで、火災報知器の位置を移動させなければならなくなりました。

 ひとつ課題を解決すると、次の課題がでてきて、もぐらたたきのようです。新型コロナウイルスのおかげで、定款を初めてとして就業規則・給与規定まで変更しなければならなくなり、本当に必要なのか必要でないのかわからない書類仕事も増える一方のように思います。

 でも、救いなのは、園で子どもたちが楽しそうに過ごしている姿です。

 

 

園長のことば (令和2年(2020).8月) 

 

 振り返ってみると、2月から新型コロナウイルス感染症のことしか書いていません。夏場は大丈夫なのかなと思っていましたら、7月に入り感染が拡大しています。福山市においても7月14日以降、ぽつぽつと感染者が出ています。どうかこれ以上広がりませんようにと願うばかりです。

今年3月以降、新型コロナウイルス感染症対策に追われていましたら、いつの間にかセミの音が聞こえてきているというのが正直なところです。もう8月なのかという思いと、新型コロナウイルスとともに生活していかなければならない社会になっているのに、この感染症が終息してはやく以前のような日常へ戻ることを願っている自分に気づかされます。

 6月の「園長のことば」に「新しい生活様式」に合わせて、園児はどのような生活習慣を身につけるべきなのか、園の衛生管理のあり方、幼児教育・保育の方法をどのようにしていくのか、園利用のあり方について検討していくことになるでしょうと書いたのですが、幼児教育・保育のあり方については、手付かずといった状態です。何か参考になるものはないかと保育関係の雑誌を見ているのですが、だれもが手探りなのでしょう。コロナ時代の保育の考え方についての記事はなかなか見つかりません。

ある保育雑誌の7月号に「日本の場合、一部屋にたくさん子どもを集めて保育する仕組みです。条件が悪いのは誰もが知っていて、これはずっと幼児教育が3密でやってきたということです。コロナ問題は、安心して生きるためには、必要なときは集まるけれども、そうでないときは適当な距離のある関係が大事だということを教えてくれたわけです。保育もそうした論理でやり方を工夫していくことが課題になった、ということだと思っています。」と書かれていました。子どもの成長にとって、3密という環境がどのような意味を持っていたのかというところから見直をする必要があるのでしょう。

 そういえば、日本の幼児教育・保育施設定員は、先進国のなかでは驚くほど大きいと書かれたものを読んだことがあります。なぜそうなったのかということですが、日本最初の幼稚園(現お茶の水大学附属幼稚園)の創設者関信三が、イギリスの孤児院と幼稚園を見間違えたことと、文献翻訳の際に誤読してしまったことが、日本の幼児教育・保育施設定員を異常に大きくしてしまったということでした。

 政府は、職場の3密を避けるためテレワークを積極的に推進しているようですが、幼稚園・保育所の3密を避けるために、園児一人当たりの面積基準が見直されるということはまずないでしょう。都市部は待機児童対策優先で、定員数を下げることもできず、保育所が最後まで3密環境のままでクラスターの発生源になるような気がします。

 そのうち、福山市においてもどこかの幼稚園・保育所でクラスターが発生することになるだろうと思います。どこの園長も、どうか自分の園でクラスター感染が起こりませんようにと祈っている事でしょう。

 現在、福山市で感染者が確認されていますので、風邪・咳症状のある場合は、登園を控えて下さい。

 

 

園長のことば (令和2年(2020).9月) 

 

 数日前より早朝は少し涼しさを感じますが、日中、屋外の熱中症警報機は鳴り通しです。室内は増設したエアコンのおかげで、窓を開けていても快適な温度に保たれています。ただ、増設したエアコンが強力で、吹き出し口の風が当たると心地よいではなくて、寒くて震え上がるようです。それで直接風があたらないように吹き出し口を手動で操作するのですが、そうすると搭載されているAI(人工知能)が開けてある窓周辺の熱気を感知して、そのあたりをめがけて全力で冷風を浴びせかけてくるわけです。エアコンのAIには、窓を開けたまま稼働させるといった使い方は想定されていないでしょうから、仕方ないのでしょうが、頑固で融通の利かない人を相手にしているようです。AIが人のする仕事を奪う時代が来ると言われていますが、エアコンのAIを見る限りは、ずいぶんと先のことになりそうです。

 昨年までは、窓を開けたままで冷房を使用することはありませんでした。脱温暖化のために電気の消費量を抑えなければなりませんから、冷房中は窓を閉めるというのが正しい事でした。それが、新型コロナ感染症対策のため、つねに換気しなくてはいけないことになり、電力消費を抑えましょうということを今年は聞かなくなりました。たぶん、電力消費を抑えましょうと言わなくても、景気後退のため工場の電力消費量が落ちているのでしょう。今年は、光化学オキシダント警報もでていないように思います。これもJFEの高炉が止まっていることと関係しているのでしょう。

 それにしても、この数年、夏場、日中は暑すぎて屋外で作業はできません。日中、道路脇の草刈り作業をされているのを見かけるたびに、申し訳なく感じます。つい先日、多目的ルームでエアコンをつけずに本棚を2つ組み立てました。わずか1時間あまりの作業でしたが、全身シャワーを浴びたようになりました。エアコンの使えない職場で仕事をされている方は、たいへんだと思いました。世の中にはたくさんの種類の仕事があり、それぞれ大切な役割を果たしているのだということを子どもたちに伝えていかなければならないことと、熱中症対策として、夏場はスペインのシエスタのような「生活様式」を取り入れることを検討しなければならない時代が来ているのではないかと思いました。

 

 

園長のことば (令和2年(2020).10月) 

 

 早朝、寒さを感じるようになりました。セミの音は、まったく聞こえなくなりましたが、かわりに秋の虫の音が聞こえてくるようになりました。日中も過ごしやすく、屋外でしっかり体を使って遊べるようになりました。

 この夏は、コロナウイルス感染症と熱中症対策のため、夏ならではの遊びの体験も十分にはできなかったように思います。今夏の保育を振り返りながら、10月以降の保育を充実したものにするために考えていかなければならないと思いながらも、もしもということを考えてしまいます。

 運動会は、3.4.5歳のみで、プログラムも短縮して行うことにしました。秋の遠足は、年長組さんは例年であれば新幹線に乗るという体験をし、それをきっかけとして保育の展開を考えたりするのですが、感染リスクと体験によって得るものを天秤にかけて、わざわざリスクを冒す必要もないかと考えてしまいます。

新幹線遠足をどうするかと思案していたら、ひろしま美術館で、絵本「ぐりとぐら」の原画展を見た後で、併設されている喫茶室で「ぐりとぐら」のケーキを食べた際の子どもたちのつぶやきや、ひろしま現代美術館で事前に美術館側と詳細な打ち合わせをして、写真撮影禁止なのですが、保育の記録として写真撮影も許可してもらったこと、そのときのヘンテコな芸術作品に接した際の、これはなんだ!と目を輝かす子どもの姿が思い出されました。

 美術館の特別展も予算削減が原因だったのでしょうが、わざわざ園児を連れていきたいと思うようなものがなくなり、私自身も書類と事務処理の煩雑さにくたびれ果ててしまったこともあり、行先が広島市から倉敷市へ変わり、いつの間にか、毎年行っているから今年も行くのだというように変わってしまったのかなと反省しています。直島、犬島、豊島、尾道の百島等々、園児に見せてやりたい現代アートは山ほどあります。現代アートは言葉のアートといってよいのかなと勝手に思っているのですが、でも解説がなくても自由で訳が分からなくて、一見するとゴミにしか見えなかったりするほどヘンなのですが、子どもの心を引き付ける作品がいっぱいあるのです。たぶん恐竜とかお化けの絵本が大好きなのと根底では通じるものがあるのでしょう。

いま、福山美術館のHPを覗いてみたら、何やら面白そうな特別展があるじゃないですか。これは行ってみたいですね。

 

 

園長のことば (令和2年(2020).11月) 

 

 桜は落葉しました。モミジが色づき始めるのももう少しでしょう。秋の虫の音もいつのまにか聞こえなくなりました。日が暮れるのも随分と早くなりました。朝夕、冷え込むようになり、さむい冬がやってくることを感じさせられます。先日、冬に備えて薪ストーブの修理をおえました。今冬は、薪の量が十分にないことと、こまめな換気と適正な室温を両立させるため、灯油ストーブを暖房補助に使わなければいけないだろうと思っています。

 

 さて、今年の運動会は、コロナウイルス感染症対策として、3.4.5歳のみでおこなうこととしたのですが、当日は雨のため、沼隈体育館で行うことになりました。例年であれば、土・日曜日に沼隈体育館が空いていることはないのですが、今年は、コロナウイルス感染症の為、各種スポーツ大会が軒並み中止になり、土曜日であっても予約が取れました。

 今年の上半期は、コロナウイルスと熱中症予防のため、体を使って遊ぶ時間が圧倒的にすくなく、そのうえ普段は土の上で走ったり、飛んだりして遊んでいるものですから、それが木の床にかわるのは、事前に一度、体育館で遊んでいるとはいえどうなのだろうか?怪我が起こるのではと心配していたのですが、杞憂だったようです。それどころか、土と木の床の違いを感じ取り、自然に走り方が変わっていたのには驚きました。それに沼隈体育館は広いので、直線で50m以上全力疾走できます。全力で走り切るということができるのは、いいなと思いました。

 以前、登園から降園までの間、どれくらい体を動かしているのか、万歩計で運動量を測定したことがあります。天候や気温の違いで、どれくらい運動量に差がでるのか、個人差はどの程度あるのか、担任が遊びに介入した場合と、そうでない場合などです。

 他県のデータですが、昭和60年代の子どもは、平均1万2千歩。平成3年から平成5年は平均8千歩。平成12年は平均5千歩です。年々子どもの運動量は減っており、それが子どもの心身の発達に与える影響は気になるところです。今はもっと減っているように思います。

 童心園の10年前の年長クラスのデータを参考までにお示しすると、平均7,600歩です。歩数には個人差があり、歩数の多い子は平均して1万3千歩。少ない子で5千歩です。

 ここ何年か、運動量を測定していないのですが、久々に測定してみる意味はありそうです。

 

 

園長のことば (令和2年(2020).12月) 

 

 11月に入り、コロナウイルス感染者数は収まるどころか急激に増えてきました。昨日(29日)、福山市においても12名の感染が確認されました。乳幼児重症化のニュースは見ませんので、その点については過度な心配は不要なのでしょうが、後遺症についてはよくわからないようですから感染しないに越したことはないでしょう。

 ただ、冷静に考えてみますと、園内でのコロナウイルス感染を完全に防げるのであれば、その他の感染症も防げるはずです。残念ながらそうではありません。その他の感染症を完全に防げないということは、コロナウイルス感染を完全に防ぐこともむずかしいと考えた方がよいのでしょう。

 マスク登園こそお願いしていませんでしたが、以前から湿度、温度、二酸化炭素濃度は24時間モニターし、子どものおもちゃ類は、紫外線殺菌装置と次亜塩素酸ナトリウム希釈液消毒・アルコール消毒をし、室内はジアイーノという空間除菌装置を稼働させていても、園内での感染を完全に封じ込めることはできませんでした。今年はそれに加えて効果のよくわからない低濃度オゾン発生機も稼働していますが、子どもがくっついて遊ぶのを禁止しないかぎり、園内感染をゼロにするのは難しいでしょう。子どもにソーシャルディスタンスを守って遊びましょうとか、声を出さずに遊びましょうというも無理な話ですから。

 はやくワクチンができればよいのですが、ニュースを見ておりますと、安全性に少々不安があるようで、接種できるようになったとしてもすぐに接種してよいものか、様子をみた方がよいのか迷います。

 繰り返してのお願いになりますが、子どもさんに体調不良の様子が見られる時は、お休みください。兄弟の片方は体調がわるいけれども、もう片方は元気だから大丈夫と登園をするのも、控えて頂ければたすかります。ご協力をお願いいたします。

 

 

園長のことば (令和3年(2021).1月) 

 

 今年を振り返ってみますと、コロナに始まり、コロナに終わる一年でした。11月半ばから、福山市でも感染者が増えてまいりました。寒さが厳しくなり、空気が乾燥すると感染者が増えるであろうと思っておりましたが、その通りになっています。来年3月中旬頃までは、感染者が増えることはあっても減ることはないと考えておいた方がよいのでしょう。

 保護者のみなさまへは春先から登園自粛や登園前の検温、マスクの着用等ずいぶんとご負担をおかけいたしました。ご協力ありがとうございました。新型コロナウイルス感染症終息は、残念ながらまだまだ先のことになりそうです。引き続きよろしくお願いいたします。

 保育の現場としては、感染防止のために遠足を始めとして中止・制限・変更しなければならないことが多かった一年ですが、中止・制限・変更したために、逆に気づかされたこともあります。

 たとえば、お遊戯会を中止いたしました。お遊戯会を中止したため11月中の保育時間の使い方が変わりました。12月のお遊戯会に向けて時間に追われることがなかったため、それぞれ自分のしたい遊びを十分にする時間があったためでしょうか、子どもの姿や表情を見ておりますと、案外良いように思われるのです。

実は以前から、運動会からお遊戯会までの期間を考えると、12月のお遊戯会というは、子どもにとってどうなのだろうか、負担が大きいのではないかと、運動会とお遊戯会のプログラムの簡略化をしてきましたが、それでも、園児にとってはやらされるという側面が強かったのかなと今年改めて思わされました。お遊戯会は20年ほど前までは、2月だったのですが、インフルエンザの流行期でもあり、12月にお遊戯会を持ってきた経緯があります。行事のあり方や時期についてはまだ再考の余地があるということなのでしょう。

さて、よいお年をと言いたいところですが、年末年始はなるべく出歩かないようにということなので、少々退屈なお正月になるのかもしれません。私は、みなさまがコロナウイルスに感染されることがないことを願いながら、寒い夜空のもと、除夜の鐘をつきたいと思います。

 

 

園長のことば (令和3年(2021).2月) 

 

 ニュースで、オリンピックはすべきでないと考える人が8割いると流れておりました。私も感染状況を見る限り、オリンピックができるかと疑問です。開催しても、柔道とかレスリングは、濃厚接触せずに練習もできないでしょうから、感染が判明して出場停止になる選手がでるでしょう。

 ワクチン接種が始まれば状況は好転するのでしょうが、ウイルスの変異も伝えられていますから、もう少しの辛抱だと簡単に言える状況にはなく、長期戦を想定しておいた方がよいと思っています。

 福山市も医療提供体制がひっ迫しており、市感染症対策本部より1月15日付で、

 1、「日常生活上必要な買い物などを含め外出機会を減らしてください。」

 2、「職場においても Web 会議や在宅勤務(テレワーク)を推進し、人との接触を減らしてください。」と要請がきています。

 不要不急の外出は控えて下さいではなく、日常生活上必要な買い物などを含め外出機会を減らしてくださいですから、厳しい要請です。

 私が福山市の感染状況で気になるのが新型コロナウイルス陽性者に対する死亡率が4%を超えていることです。これは感染者25人に対して1人が死亡するということです。全国平均は1%前後ですから高い値です。

 福山市の値が高いのは、一過性のものなのか、それともお年寄りや病人の感染が多いのかなと思うのですが、もしかしたら福山市も陽性者の死亡率は全国平均とかわらないのだけれど、検査を受けていない無症状者が多いから、死亡者数÷陽性者数では高い値がでるのではないかと思えたりもします。もしそうだとしたら、市HPに載っている人数の4倍の感染者がいる可能性があることになります。

 少々心配し過ぎと思われるかもしれませんが、保育の現場としては、少々心配し過ぎでちょうどよいと思っています。ただ、保育が制約を受けますのでいつまでも記憶に残る心躍る体験が貧相なものになってしまっているところがあるようにも感じられ、そこを考えていかなければなりません。

 この時期、例年であれば大相撲童心園場所の時期で、お相撲大会へ向けて、それぞれがお相撲について調べながらアイデアを出し合い、創意工夫を凝らしながら、準備を進めていきます。そしてやる気まんまん気分最高潮のなかで大相撲童心園場所当日を迎えるのです。ですがお相撲は濃厚接触そのものですし、三密をなるべく避ける保育の工夫をするようにということなので、今年の大相撲童心園場所は、紙相撲大会になってしまいました。例年であれば、お相撲大会のお昼は、鍋を囲んでちゃんこ鍋なのですが、それも感染予防のためにできませんでした。おおきな声での声援も控えなければなりませんから、なにか、盛り上がりに欠けた気分です。感染予防のため、保育に制約の多い年度になりました。それが、子どもにとってプラスに感じられたこともありますが、全体としてみるとやはり経験・体験の内容が寂しくなったかという印象です。

 感染予防のために、ご家庭でのこまめな手洗いとうがい、そして十分な睡眠時間の確保をお願いいたします。

 

 

園長のことば (令和3年(2021).3月) 

 

 年長組さんにとっては、園で過ごす最後の月です。昨年3月は、コロナウイルス感染症により小中高等学校が休校になるなか、幼稚園・保育所・認定こども園は休園ではなかったので、もしもの最悪な状況が想像され神経をすり減らす日々が始まったことを思い出します。 

 この2月末、ようやく医療関係者からワクチン接種がはじまったので、先行きに見通しが持てるようになり、なんとなくですが気持ちも楽になったように感じています。注射は苦手なのですが、この度だけはワクチン接種が待ち遠しい気持ちになっている自分に苦笑しています。

 ただし先日、湯崎知事がいまの福山市の状況は、感染が急拡大した昨年末の広島市の状況とよく似ていると言われましたので、まだまだ緊張を解いてはいけないのでしょう。たしかに福山市の死亡率は全国平均と比較すると高いので、PCR検査を受けていない無症状感染者がかなりいる可能性があるとも言えます。

 あの年は、コロナウイルス感染症で世界中大騒動だったなあと、笑って言える日がはやくくればいいなあと思います。でもなかなかそうはいかないのかなあという思いもあります。忙しくうれしい悲鳴という業種もあるのでしょうが、飲食業や観光業は回復にはまだしばらくは時間がかかるでしょう。飲食業・観光業に従事されている方々のことを思うと、胸が痛みます。

 この一年、園児にとっても制約の多い一年でした。その点、申し訳なかったです。収穫があったとすれば、手洗いうがいの習慣を徹底すれば、通常の感染症もかなり防げるということがよくわかったということでしょうか。